ミンダナオと先住民族
フィリピン共和国には、先住民族(Indigenous peoples)として1987年憲法に初めてその権利が明記された人々が総人口の18%、約1300万人(1996年)暮らしています。特に、スペイン支配が及ばなかったミンダナオ島には固有の文化を今に至るまで継承している民族(イスラム系のモロ"Moro"
13民族、非イスラム系のルマド "Lumad" 18民族)が多くみられます。
人口約6万人のレイクセブ町の半数を占めているティボリ民族もその一つです。他の先住民族と同じく、20世紀以降の入植政策や農業開発により農耕適地を奪われ、山岳部でも伐採業者や鉱業資本の進出で森が消滅して生活基盤を失いました。伝統文化の継承はもちろん、生存さえ厳しい状況におかれました。
一方、先祖伝来の土地の奪回、環境の修復、そのための教育普及に対する支援が1960年代から入ったため、この地域の初等教育普及率は推定45%と、他の先住民族地域に比べると高く、アバカ繊維の草木染・手織りの織物ティナラクをはじめとする伝統文化も比較的よく継承されています。
しかし、文化的少数派である先住民族にとって、画一的カリキュラムによる教育からドロップ
アウトする子どもも多く、いまだに続く入植者による土地収奪、農業資本によるモノカルチャー
の拡大、都市部における民族差別などもあって、ほとんどが国連の定める貧困ライン以下の
生活にとどまっているのが現状です。 |
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