「事業が始まるまで、私たちを助けてくれる人なんか
いないと将来に絶望を感じていました」
キナマンガン村でのミーティングは、住民が農作業を終えた18時に始まりました。昼間に受益者18名のうち6名の農地の見学を終えていた私は、この言葉に愕然としました。自治体から無視され続けた先住民とはいえ、こんなに希望の無い言葉を聞いたのは初めてです。しかも彼らは1ヘクタール以上の土地の耕作権を持ち、年1回陸稲を、年3回トウモロコシを収穫しているのです。この収穫だけでは自家消費にも足りず、近隣の農場での日雇いで食い繋ぐ現状がここにありました。
両親と子ども5人を標準家庭とすると、90ペソ(180円)する1ガンタ(2.2kg)のコメを2回の食事で消費します。日雇い仕事は1日100ペソ(200円)。つまり100ペソの稼ぎだけだと、朝・昼を食べて、夜は食べずに就寝するのです。
また小学校は6キロ先。お金が払えれば送り迎えをオートバイに頼みますが、1ヶ月1人250ペソ(500円)。これが5人分ともなると大変です。現在の親世代が小学生のころは歩いて通っていたそうですが、低学年に6キロの道のりはとても疲れます。
フィリピン人男性は一般に子どもの面倒をよく見ますが、この村の男性たちは本当に子どもを大事にしています。パラノキゴム植林3年計画の3年目を終え、冒頭の言葉は次のように続きました。
「私たちは今、子どもたちの未来の準備をしています」
なんてステキな言葉でしょう!そして次のチャンスを得るため組合化し、自治体とも交渉していく力を付ける、と約束してくれました。
(三井物産環境基金助成)
|